Ⅴ 看護
2 妊孕性温存における看護
① 妊孕性温存に関する希望を確認する
妊孕性温存に関する相談は、いつ、誰にでも適応となるとは限りません。
乳がんと診断され、初期治療を開始する前の生殖年齢の患者には、妊娠の可能性および挙児希望について確認をする必要があります
初診時の問診票等に将来的な妊娠・出産の希望についての質問を設けていると確認しやすくなります。
②看護師自身の価値観を押し付けない
がんの疑いを持ち受診する患者は、大きな不安を抱えて外来へやって来ます。
特に、妊孕性温存を検討する患者は、社会や家族において各々の役割を持ちながら、人生を歩んでいます。そして、がんと診断された後は、様々な葛藤に直面しつつ、家族、パートナーの意向も確認しながら、治療方法を決めていきます。看護師がそのような患者と面談する際、患者や家族がどのような価値観を持っているのかを整理して確認することはもちろん、事前に看護師である自分自身の価値観を見つめることが重要です。看護師が自分の価値観を理解していることは、自分の価値観を押し付けず、患者の自己決定を尊重することにつながります。
③がんと生殖の正しい知識をもち正確な理解をする
妊孕性温存を理解するためには、今まで説明したがん治療による性腺機能への影響と妊孕性温存の方法に関する知識が必要です。妊孕性喪失を告げられ、精神的に混乱している患者にとっては、更に理解が難しいことが考えられます。医師から妊孕性に関する説明がされても、一度に全てを理解することは困難であるため、薬物療法の必要性と卵巣毒性の機序やリスク、妊孕性温存の具体的な方法をわかりやすく、エビデンスに基づいて患者と話し合っていくことが期待されます。
④患者の困難を理解し整理する
妊孕性喪失の可能性を聞いた患者の中には、これまでの人生で妊娠・出産に関して考える機会があまりなかったため、がんの診断がきっかけで妊孕性喪失の可能性に衝撃を受け、がん治療に対して積極的になれないケースもあります。また、自身の妊孕性について深く考える時間的、精神的あるいは経済的な余裕がなく、妊孕性温存を諦めるケースもあります。医師からの説明後にプライバシーが確保される場所で、患者のみと看護師が話せる場を持つことが大切です。その際、患者の理解度を確認すると共に患者の気持ちの揺れを理解し、何に困難を感じているのか、一つ一つ整理していく支援を行う必要があります。妊孕性や性に関する疑問や不安は、患者自身から言い出すことができない場合もあります。医師への質問方法を患者へアドバイスし、疑問が解決できるよう促します。
⑤他職種との連携
・がん治療医との連携
生殖医療を受診する際、最終月経、基礎体温の推移(無くても良い)、病状、ホルモン受容体の有無、治療内容とスケジュール、直近の血液検査の結果、パートナーの有無等、詳細な情報を提供します。看護師は、病気に対する受け止め、妊孕性への希望、パートナーや家族の理解度、就労等で配慮すべき点はあるのかなど、心理・社会面での情報収集し、看護サマリーとして添付することが望まれます。ASCOは妊孕性温存に関する対応は、医師のみならず看護師、ソーシャルワーカー、心理士などヘルスケアプロバイダーも責任を持って対応することを2013年のガイドラインにアップデートしました13)。妊孕性温存に関する問題は多岐に渡るため、他職種で連携する必要があります。しかしながら、患者にとっては、多くの医療者と関わることにより、混乱を生じる可能性もあります。それぞれの医療者への橋渡しをがん領域の看護師が行い、患者が目標に向かって行けるよう伴走していく必要があります。また、妊孕性喪失の危機に直面しながら、がん治療を受ける苦悩に共感し、さらに治療後の生き方にも寄り添う存在であることを継続的な関わりの中で伝えていくことが求められています。
⑥妊孕性温存ができなかった時の看護
生殖医療医に紹介したとしても、採卵がうまくいかなかったり、がん治療を優先することや経済的理由で温存を諦める患者さんもいます。どのような選択であっても、患者が自身の意思決定に納得して、がん治療に前向きになれるよう支援します。妊孕性温存することや治療後の妊娠・出産だけが最終的なゴールではなく、女性としての生き方に対する価値観や家族観の再構築や気づきを讃えることが必要です。
⑦がん治療後の継続的な支援
薬物療法後、月経が回復したからといって必ずしも妊娠が可能な状態とはいえないため治療後の卵巣機能の評価を定期的に行う必要があります。
ホルモン受容体陽性患者は、ホルモン剤を内服していることにより、子宮体癌のリスクを伴うため、がん検診を受けることを勧めます。また、早発閉経に伴い、更年期症状に気づかず不調を来している患者もいるため、継続した情報収集と定期的な婦人科への受診を確認するのもがん領域の看護師の役割だと考えます。
一度は妊孕性喪失のリスクを受け入れたつもりであっても、生活の幅が広がり、周囲の結婚、出産を見守る中で、改めて自分自身の妊孕性における問題を考え始める患者さんもいます。初期治療後も話し合う機会を設けることや婦人科と連携を図っていくことが重要です。
妊孕性温存に関する相談は、いつ、誰にでも適応となるとは限りません。
乳がんと診断され、初期治療を開始する前の生殖年齢の患者には、妊娠の可能性および挙児希望について確認をする必要があります
初診時の問診票等に将来的な妊娠・出産の希望についての質問を設けていると確認しやすくなります。
②看護師自身の価値観を押し付けない
がんの疑いを持ち受診する患者は、大きな不安を抱えて外来へやって来ます。
特に、妊孕性温存を検討する患者は、社会や家族において各々の役割を持ちながら、人生を歩んでいます。そして、がんと診断された後は、様々な葛藤に直面しつつ、家族、パートナーの意向も確認しながら、治療方法を決めていきます。看護師がそのような患者と面談する際、患者や家族がどのような価値観を持っているのかを整理して確認することはもちろん、事前に看護師である自分自身の価値観を見つめることが重要です。看護師が自分の価値観を理解していることは、自分の価値観を押し付けず、患者の自己決定を尊重することにつながります。
③がんと生殖の正しい知識をもち正確な理解をする
妊孕性温存を理解するためには、今まで説明したがん治療による性腺機能への影響と妊孕性温存の方法に関する知識が必要です。妊孕性喪失を告げられ、精神的に混乱している患者にとっては、更に理解が難しいことが考えられます。医師から妊孕性に関する説明がされても、一度に全てを理解することは困難であるため、薬物療法の必要性と卵巣毒性の機序やリスク、妊孕性温存の具体的な方法をわかりやすく、エビデンスに基づいて患者と話し合っていくことが期待されます。
④患者の困難を理解し整理する
妊孕性喪失の可能性を聞いた患者の中には、これまでの人生で妊娠・出産に関して考える機会があまりなかったため、がんの診断がきっかけで妊孕性喪失の可能性に衝撃を受け、がん治療に対して積極的になれないケースもあります。また、自身の妊孕性について深く考える時間的、精神的あるいは経済的な余裕がなく、妊孕性温存を諦めるケースもあります。医師からの説明後にプライバシーが確保される場所で、患者のみと看護師が話せる場を持つことが大切です。その際、患者の理解度を確認すると共に患者の気持ちの揺れを理解し、何に困難を感じているのか、一つ一つ整理していく支援を行う必要があります。妊孕性や性に関する疑問や不安は、患者自身から言い出すことができない場合もあります。医師への質問方法を患者へアドバイスし、疑問が解決できるよう促します。
⑤他職種との連携
・がん治療医との連携
生殖医療を受診する際、最終月経、基礎体温の推移(無くても良い)、病状、ホルモン受容体の有無、治療内容とスケジュール、直近の血液検査の結果、パートナーの有無等、詳細な情報を提供します。看護師は、病気に対する受け止め、妊孕性への希望、パートナーや家族の理解度、就労等で配慮すべき点はあるのかなど、心理・社会面での情報収集し、看護サマリーとして添付することが望まれます。ASCOは妊孕性温存に関する対応は、医師のみならず看護師、ソーシャルワーカー、心理士などヘルスケアプロバイダーも責任を持って対応することを2013年のガイドラインにアップデートしました13)。妊孕性温存に関する問題は多岐に渡るため、他職種で連携する必要があります。しかしながら、患者にとっては、多くの医療者と関わることにより、混乱を生じる可能性もあります。それぞれの医療者への橋渡しをがん領域の看護師が行い、患者が目標に向かって行けるよう伴走していく必要があります。また、妊孕性喪失の危機に直面しながら、がん治療を受ける苦悩に共感し、さらに治療後の生き方にも寄り添う存在であることを継続的な関わりの中で伝えていくことが求められています。
⑥妊孕性温存ができなかった時の看護
生殖医療医に紹介したとしても、採卵がうまくいかなかったり、がん治療を優先することや経済的理由で温存を諦める患者さんもいます。どのような選択であっても、患者が自身の意思決定に納得して、がん治療に前向きになれるよう支援します。妊孕性温存することや治療後の妊娠・出産だけが最終的なゴールではなく、女性としての生き方に対する価値観や家族観の再構築や気づきを讃えることが必要です。
⑦がん治療後の継続的な支援
薬物療法後、月経が回復したからといって必ずしも妊娠が可能な状態とはいえないため治療後の卵巣機能の評価を定期的に行う必要があります。
ホルモン受容体陽性患者は、ホルモン剤を内服していることにより、子宮体癌のリスクを伴うため、がん検診を受けることを勧めます。また、早発閉経に伴い、更年期症状に気づかず不調を来している患者もいるため、継続した情報収集と定期的な婦人科への受診を確認するのもがん領域の看護師の役割だと考えます。
一度は妊孕性喪失のリスクを受け入れたつもりであっても、生活の幅が広がり、周囲の結婚、出産を見守る中で、改めて自分自身の妊孕性における問題を考え始める患者さんもいます。初期治療後も話し合う機会を設けることや婦人科と連携を図っていくことが重要です。