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Ⅳ 乳がん患者の心理社会的特徴

3 費用、経済面

1)妊孕性温存にかかる費用

妊孕性温存の費用は自費診療となるため高額であり、がん治療の費用や通院費を含めて、患者には多くの金銭的な負担がかかります。
さらに、凍結保存を継続するためには保管費の負担、がん治療後に生殖細胞を移植する費用と、長期間の経済的負担を強いられることが考えられます。
以下に妊孕性温存にかかる費用の一部を表2にまとめました。

表2 がん患者の妊孕性温存と費用(文献19)および2018年11月29日調べ)

3 費用、経済面01 この表は、都内近郊の施設で凍結費用を公示しているデータを記載しており、施設間で大きな差があります。 

2)都道府県が実施する助成事業

(1)特定不妊治療助成金制度
不妊治療の費用を補助する公的制度として厚生労働省の「母子保健及び子どもの慢性的な疾病についての対策」の「不妊に悩む方への特定治療支援事業」として「特定不妊治療助成金制度」があります。
こちらは事業実施主体(都道府県、指定都市、中核市)において医療機関が指定されています。また、対象治療は体外受精および顕微受精ですが、自治体によっては不妊症検査や一般不妊治療(タイミング法や人工授精)に対して助成するところもあります。
(2)がんの妊孕性温存のための助成事業
現在、がんの妊孕性温存に対する助成金制度は少ないですが、埼玉県、滋賀県、広島県や京都府、千葉県の一部の自治体(いすみ市、館山市)では、がん患者に対する妊孕性温存治療への助成事業を行っています。(2018年12月4日調べ)
対象者や治療、助成金額は各自治体で様々ですが、おおよそ申請は一度のみとなっています。妊孕性温存療法に要する費用が対象で、入院費や入院時の食費等の直接関係のない費用などは対象外でした。

表3 特定不妊治療助成金制度とがん患者への妊孕性温存のための助成事業との比較
(文献21)および2018年12月3日調べ)>

3 費用、経済面04