Ⅲ 妊孕性温存の方法
3 乳がんの治療と生殖医療の流れ
乳がんの治療と生殖医療の流れを図7と図8に示しました。
1)妊孕性温存まで
●がん診断時に、がん治療が患者の将来の妊孕性に及ぼす影響を評価し、リスクがある場合に患者・家族と話し合い、意思決定に応じて妊孕性温存療法を行い、がん治療開始となります。●薬物療法導入前のオリエンテーションでは、薬物療法中の胎児への影響を考えて、避妊の説明を行う必要があります。
●術前化学療法の前に妊孕性温存をする場合に、妊孕性温存にかけられる期間は最大4週間程度です(図7)。
●術後薬物療法の前に妊孕性温存をする場合は、妊孕性温存にかけられる期間は最大12週間程度です(図8)。
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図7 乳がんの術前化学療法を行う場合の治療と生殖医療のながれ
(文献10)p258,17)18)を参考に作成)
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図8 乳がんの術後化学療法を行う場合の治療と生殖医療の流れ
(文献10)p258,17)18)を参考に作成)
2)妊娠に向けて
●未受精卵、卵巣組織凍結保存の場合は、がん治療医の妊娠許可がおりてから、パートナーと共に生殖医療医を受診し、妊娠への準備を行います。●化学療法終了後は少なくとも6ヶ月、分子標的薬は7ヶ月、内分泌療法薬は内服終了後2ヶ月程度は胎児への影響を考えて妊娠を避けるほうがよいと言われてます。
●乳癌患者の妊娠・出産と生殖医療に関する診療の手引き19)において現在のところ得られるエビデンスからは乳癌治療後の妊娠に関し、乳癌の予後悪化を理由に妊娠を避けるよう勧めたり、中絶を勧めたりする積極的な根拠はない、とされています。
しかしながら、StageⅣ乳癌もしくは遠隔転移を伴う再発乳癌患者では妊娠を認められない、としています。