top Ⅱ がん治療における性腺機能への影響

1 正常な生殖機能とは

女性の生殖器には子宮、卵巣があります。子宮は出産するまでの間、胎児を育む場所で、卵巣は、卵子が貯蔵され女性ホルモンのバランスを保ち、月経を起こす臓器です。
 
妊娠が成立するためには、卵巣から排卵された卵子と精子が卵管内で出会い、受精し、子宮内膜に着床するという過程が必要です(図1)。そして妊娠のために必要な卵子、精子のことを配偶子、卵子と精子が出会って受精したものを胚(受精卵)と呼びます。

図1 妊娠のしくみ (画像提供:彩考/PIXTA)

1 正常な生殖機能とは01 卵子は胎児期に作られ、それ以降は新たに作られることはなく、出生後は年齢とともに減少していきます(図2)。
一方、精子は作り続けられるため、男性と女性の配偶子には違った特徴があります。卵子は、初経が始まると毎月排卵され、生殖年齢・閉経に向けて徐々に少なくなり、卵巣機能は低下します。晩産化が進んでいることもあり、実際に出産を希望された時点で、すでに妊娠しにくい状況にある可能性もあります。
一般的に30代中頃から妊孕能は低下し、42~43歳が自然妊娠の限界であるとされています。同時に流産率も35歳頃より上昇し始め、40歳代では更に上昇します。

図2 卵子数の経年変化(文献11)をもとに作成)

1 正常な生殖機能とは02 このように卵子は加齢と共に、数だけではなく質も低下するため、体外受精を行ったとしても、20代での妊娠率は3割程度、出産率は更に低くなり、年齢が上がるに連れてそれぞれ低下することになります。
特に抗がん剤治療を行う場合は、年齢による衰えに加えて、抗がん剤による卵巣へのダメージの影響も考慮する必要があります。