top Ⅰ“Oncofertility”とは

がんサバイバーの妊孕性に関するQOLの維持、向上支援を目的に、2006年アメリカで腫瘍学(Oncology)と生殖医療(Fertility treatment)を組み合わせたOncofertility(がん・生殖医療)という新しい医療概念が誕生しました8)。
 
さらに、米国腫瘍学会(The American Society of Clinical Oncology: ASCO)は米国生殖医学会(American Society for Reproductive Medicine: ARSM)との共同で、世界初となるがん患者を対象とした妊孕性温存療法に関する臨床診療ガイドラインを2006年に発表しました9)。
 
がんと診断された患者は、治療だけではなく仕事や家庭との調整といった様々な問題も同時に起こり、短期間にいくつもの意思決定を迫られます。更に、妊孕性温存は、がん治療前にカウンセリングへ行き、実施するかどうかの選択をするため、時間的余裕もあまりありません。がんと診断され、自分の命と向き合わなくてはならない時に、まだ見ぬ次世代の命とも向き合い、短時間で意思決定することが求められています。そのため、がん・生殖医療の実践のために、がん治療チームが正確な情報を的確に患者に伝え、生殖医療チームに橋渡しをする“連携”が重要です。しかし、生殖医療とがん治療の連携は充分とは言えない状況にあります。
 
そこで、2012年がん患者に対する「がん・生殖医療」の普及と適格な医療連携構築を目途とし、特定非営利活動法人日本・がん生殖医療研究会(Japan Society for FertilityPreservation :JSFP)が設立されました。JSFPは、設立当初よりシンポジウムなどを通じて、がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドラインを発行し、様々な学術集会の場でがん・生殖医療の啓発・教育を行っています10)。