top はじめに

わが国の女性のがん罹患数第一位は乳がんであり、2014年の年間罹患数は76,000人と推定されています1)。乳がんの年代別罹患数は30歳代から増加し、40歳代後半から50歳代にピークを迎えるという特徴があります。また40歳未満の女性が罹患する悪性疾患のなかで最も多いのが乳がんであり、約4,000人が罹患していると言われています。このように乳がんは働き盛りで子育てをしている世代に多く見られるものの、がん医療の進歩により生存率や治癒率が向上し予後が改善されるようになりました。その結果、乳がんサバイバーが、今後の人生をがんと共にどのように生きていくかを考えられる時代になりました。
 
がんに対する治療内容は、妊よう性(妊孕性;妊娠できる力)に影響を及ぼすことが知られており、不妊や性ホルモンの分泌の低下を来すことが明らかとなってきています2)。また、生殖補助医療の発展もあり、挙児希望のあるがん患者に対するQOLの維持、向上支援に関心が高まりました。
 
がん患者のケアに携わる看護師は、患者が治療と生殖医療ともに混乱なく選択できるよう案内役となるナビゲーターの役割を果たす必要があると言われています3)。
 
いくつかの調査で、看護師は生殖年齢にあるがん患者と妊孕性温存についての話し合いに障壁を感じていることが示されています。その理由として相談時間の不足、患者の予後不良、知識不足、教育(教材)の不足があげられていました4)5)。また、森ら(2014)のがんに携わる看護師への調査や高橋ら(2018)の調査によると、妊孕性に関する知識や学習の機会に対するニーズを多くの看護師が持っていることが分かりました6)7)。
 
そこで、このe-learningプログラムは、乳がん患者の妊孕性温存について具体的に学び、がんに携わる看護師がナビゲーターとしての役割を果たすことができるよう作成しました。